5月18日(土)「第三の男」

「第三の男」('49・英)監督:キャロル・リ−ド 原作・脚本:グレアム・グリ−ン 撮影:ロバ−ト・クラスカ− 音楽:アントン・カラス
出演:ジョゼフ・コットン/オ−ソン・ウエルズ/アリダ・バリ/トレバ−・ハワ−ド
★英国の作家G・グリ−ンの同名小説の映画化。第二次世界大戦直後、廃墟になったウイ−ンに、親友ハリ−を訪ねてきたアメリカ人の作家ホリ−は、到着早々ハリ−の死を知らされ愕然とする。ホリ−はハリ−の死因がふに落ちないため、愛人だったアンナをはじめ、知り合いにハリ−のことを聞きまわるがすっきりしない。だが、イギリス占領軍の少佐の口から、ハリ−が闇取引の黒幕で、粗悪なペニシリン横流しで多くの犠牲者を出していたことを聞き呆然とする・・・。映画の持つ芸術性と娯楽性がみごとに融合したクラスカ−のモノクロ撮影、カラスのテ−マ曲は不滅の輝き。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎何度この映画を見たことか、そう思うとやはり言いたいことが出来てくる。サスペンスの盛り上げ方はさすがに巧いなとは思うが、やたらに傾いた構図のカメラワ−クが鼻に付くし、ハリ−の出現までの筋の運びがモタモタしていて、ホリ−という人の良いアメリカ人をこの廃墟のウイ−ンに持ってきた原作・脚本のグリ−ンの悪意のようなものさえ臭ってきて、廃墟に巣くう男爵やら怪しげな医者やらの描写が、こいつは「ドイツ零年」からのイタダキじゃないかなんてことまで考えてしまうのだった。そもそもホリ−とハリ−の友情なんてものがあり得たわけがないじゃないかと思わせるほどに、ハリ−とホリ−の描き方も類型的であるし、アンナとホリ−の交情もスッキリしない。結局カラスのチタ−の音色がなかったらこれほどに傑作として持て囃されることはなかったのじゃないか、なんてひねくれた見方を今回はしてしまったのだった。呑気呆亭