5月17日(金)「三人の名付親」

「三人の名付親」('48・米)監督:ジョン・フォ−ド 原作:ピ−タ−・B・カノン 脚本:ロ−レンス・スタ−リングス/フランク・S・ニュ−ジェント撮影:ウイントン・C ・ホック 音楽:リチャ−ド・ヘイゲマン 出演:ジョン・ウエイン/ペドロ・アルメンダリス/ハリ−・ケリ−Jr/ワ−ド・ボンド/ベン・ジョンソン/ジェ−ン・ダ−ウエル
★「恵みの光」('19)、「砂漠の生霊」('30)、未公開の36年版に続く、ピーター・B・カインの小説の映画化。保安官に追われる三人組の強盗が荒野のド真ん中で、身重の女を乗せた幌馬車に出会う。女は赤ん坊を産み落とすと、三人を名付け親に頼み息を引き取った。三人は赤ん坊を無事に町へ届けようと出発するが、水も無く陽に照らされるだけ彼らの道行きは困難を極めた…。アクションだけでなく、人情劇にも圧倒的な力量を見せるJ・フォードが、きめ細やかな人物描写と、西部の光景による心象描写を織り混ぜた逸品。罪を犯した男たちが幼い命を守ろうと旅する中、やがてそれが贖罪の道程へとなる寓意も含めて、実に感動的な造りになっている。“三人”に扮するJ・ウェイン、P・アルメンダリス、これがメジャー・デビューとなったH・ケリー・Jr(「恵みの光」では父ハリー・ケリーが主演していた)も熱演。<allcinema>

◎フォ−ドはこの作品を同士であり恩人でもあったハリ−・ケリ−に「To Harry Carey,Bright Star Of The Early Western Sky」との献辞をタイトルに記して捧げている。ケリ−主演の前作「恵みの光」は原題が「Marked Men」とされ、元々の原題「Three Godfather」からより作品の意図を現わす題名に変えられていた。フォ−ドのケリ−に対する想いを表した変更だったのではあるまいか。ジョン・ウエインが時々見せる左手で右肘を触る動作も、ウエインのケリ−に寄せるオマ−ジュであるということを何かで読んだ記憶がある。そのケリ−の息子を名付け親の一人に起用して、フォ−ドは西部の砂漠を舞台に心温まるファンタジーを創作した。悪党の追跡の物語でありながら一人の悪人もいなかったという希有な作品であった。サム・ペキンパ−はこの作品へのオマ−ジュとして「砂漠の流れ者=THE BALLAD OF CABLE HOGUE」という「砂漠と水」をテ−マとした映画を撮ったのではないかと、余計なことを考えた。呑気呆亭