5月10日(金)「蜘蛛巣城」

蜘蛛巣城」('57・東宝)製作・監督・脚本:黒澤明 原作:シェイクスピア 脚本:小国英雄/橋本忍/菊島隆三 撮影:中井朝一 美術:村木与四郎 音楽: 出演:三船敏郎/山田五十鈴/千秋実/志村喬/久保明/木村功
シェイクスピアの原作「マクベス」を日本の戦国時代にあてて翻案した作品。謀反をおこした敵を破り主家の危機を救った鷲津武時は、帰城途中に出会った老婆の予言通り大将に任ぜられる。武時は妻・浅茅にそそのかされて城主を殺害し、自ら城主となったが、妻は再び親友・義明を殺すことを迫る。武時は今また義明を討ち、良心の呵責ゆえに半狂乱に。一方、身ごもっていた浅茅は死産し重体に陥る。義明の子・義照は城主の一子を奉じて軍勢を率い、蜘蛛巣城に押し寄せる。城内の将兵は不安におののき、浅茅も発狂。武時は首を矢で射抜かれて死ぬ。黒澤は演出に能楽の様式を持ち込み、みごとに成功させている。三船=マクベスが無数の矢にさらされるシ−ンが圧巻。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎これほどのセットと衣装と武具と馬装具と役者群を揃えた映画はもう出来ないだろう・・・と、今回も痛切に思いながら観た。三船の熱演も山田の怪演も今となっては懐かしい伝説と化している。個人的な興味があって、出演者たちの馬の乗り方を今回はチェックしてみた。西洋式の馬術では馬体の左から乗り込む(ジョン・ウエイン)、日本式は左腰に大小を差しているために右側から乗り込むのが正しい乗り方降り方であると言われている。冒頭の反乱の急を告げる騎手は左に降りたのは慌てていたからか。三船と千秋はさすがに正しく(一度だけ三船が左に降りたが)乗り降りしていた。馬に乗っての戦いでは左手を弓手(ゆんで)右手を馬手(めて)というが、三船が馬手に弓と手綱を一緒に握っていたことと、千秋が弓手に槍を持っていたのは、もう戦いの現場ではなかったからか、などと考えながら今回も楽しんで見ることが出来た。黒澤さんとスタッフ・キャストに感謝!呑気呆亭