5月9日(木)「一心太助 天下の一大事」

一心太助 天下の一大事」('58・東映)監督:沢島忠 脚本:鷹沢和善 撮影:坪井誠 音楽:鈴木静一 出演:中村錦之助/中原ひとみ/月形龍之介/桜町弘子/丘さとみ/堺駿二
沢島忠監督と中村錦之助コンビによる「一心太助」シリーズの第二弾。川勝丹波守の横暴な振る舞いに立ち上がる大久保彦左衛門(月形龍之介)と一心太助中村錦之助)の活躍を描く。
旗本で御城改築奉行になった川勝丹波守が、許婚のある腰元を側室にしようとしていた。それを知った大久保彦左衛門が城の改築工事現場に乗り込むが、丹波守は危険を感じ、老中たちに大久保家の空き地の召し上げを求めた。騒ぎを聞きつけた徳川家光はその空き地を接収するが、その代償に彦左衛門の一代我儘勝手を老中一同に申し渡す。腰元おとよの許婚者である幸吉は、彼女を救い出そうとするが失敗。おとよの身に危険が迫ったそのとき、魚河岸仲間を総動員した一心太助が乗り込んだ。<allcinema>

◎'51年の坂東妻三郎主演の「おぼろ駕籠」で幕閣の脅しにもビクともせず、イザとなれば槍を執ってもとことん抵抗して見せるぞという肚の据わった旗本・本多内藏介という役を演じた月形龍之介が、まさにそれを絵に描いたような大久保彦左衛門を気持ち良さげに演じている。加えて中村錦之助が彼のために用意されたような一心太助という役を、これも生き生きと演じていて、その二人をめぐる役者さんたちも所を得て、良質の娯楽映画となっている。太助が彦左衛門の空き地を守って一人で木場の連中と渡り合うシ−ンで、刃物も商売道具の天秤棒も使わずに下駄を武器にさせた所に、監督とスタッフの見識が感じられて好ましかった。彦左衛門から出入り差し止めを喰らった太助が、飲めない酒に酔って路地を彷徨うシ−ンの逆光の映像処理も素晴らしい仕事でありました。呑気呆亭