5月7日(火)「炎上」

「炎上」('58・大映)監督:市川崑 原作:三島由紀夫 脚本:和田夏十/長谷部慶治 撮影:宮川一夫 出演:市川雷蔵/仲代達矢/中村鴈治郎/浜村純純/北林谷栄/信欣三/新珠三千代/中村玉緒
三島由紀夫作『金閣寺』の映画化。しかし“金閣寺”という名称を使うことが許されず、劇中では“驟閣寺”という名前に変更された。主演の市川雷蔵は、現代劇初出演となったこの作品で、ブルーリボン賞キネマ旬報賞を受賞した。
溝口吾一は父の親友が住職をつとめる驟閣寺に住み込むことになった。驟閣寺はこの世で最も美しいものと亡き父に教え込まれた吾一だったが、やがて観光客が多数訪れるようになり、信仰の場ではなく単なる観光地に成り下がってしまうのを目の当たりにする。古谷大学に通うようになった吾一は戸苅という学生と知り合うが、戸苅は驟閣寺の美を批判し、住職の私生活を暴露した。<allcinema>

◎以前若い頃に見た時にはその映像と登場人物のアクの強さに圧倒された記憶があるが、今回見直してみて、ああこれは三島=市川=和田の「ハムレット」なのだなと思ったことだった。鴈治郎の住職がクロ−デイアスだとすれば、驟閣は王座か?「生きるべきか死ぬべきか」の彷徨に付き添う仲代はホレイショ−かメフィストか。とすればちょっと出の玉緒はオフェ−リア?それが三島の意図する所だったのかそれとも市川=和田の仕掛けたナゾナゾだったのか?その雷蔵ハムレット鴈治郎=クロ−デイアスが『碧巌録』を間にして対立するシ−ンの緊迫感には凄味のようなモノさえ感じられた。炎上のシ−ンと山陰の浜辺での葬儀のシ−ンの美しさ、ベテラン北林、信、浜村の好演は言うまでもない。呑気呆亭