5月4日(土)「狂恋」

狂恋」('49・仏)監督:ジョルジュ・ラコンブ 原作:ピエ−ル・ルネ・ボルフ 脚本:ピエ−ル・ヴェリ 撮影:ロジェ・コベ−ル 出演:ジャン・ギャバン/マレ−ネ・ディ−トリヒ/マ−ゴ・リオン/ダニエル・ジュラン
★M・ディートリッヒとJ・ギャバンの二大スター共演による恋愛サスペンスの大作。小鳥屋を経営する女主人ブランシュは未亡人だが、街の領事との結婚の約束が取り交わされていた。ある夜、気晴らしに外出した彼女は建築屋の男ルーマニャックと出会う。粗野で乱暴だが人間的な温かみを持つ彼にブランシュは心惹かれ、やがて二人は恋人同士となる。が、ある日ルーマニャックの仕事場で作業員の一人が事故で死んでしまう。同じ頃、酒場でルーマニャックは彼女の悪い噂を聞いてしまう。それら様々なことがきっかけである日、ルーマニャックは彼女を喧嘩の果てに殺してしまった。クライマックスの裁判シーン以降、ラストまでのたたみかけるような展開の妙が見もの。<allcinema>

◎ドラマを成立させるためにこうした悲劇的な展開を選択せざるを得なかったのだろうが、“小鳥は好き?”“カゴの中の鳥は好きじゃないが大空を飛ぶ鳥は好きだ”との会話から始まったブランシュと、叩き上げの建築屋ルーマニャックの出会いは好ましいもので、自分が扱う無機質の石材の温かさを語るルーマニャックの言葉には労働する者が自得した哲学さえ感じられる。その二人の出会いが相互に高め合う幸福な結末に至るのではドラマが成立しないのだろうか?こんな風なギャバンは見たくなかったし、こんな風に無残に殺されるディ−トリヒも見たくなかった。呑気呆亭