5月1日(水)「アンダ−グラウンド」 番外上映

「アンダ−グラウンド」('95・仏・独・ハンガリ−)監督・脚本:エミ−ル・クストリッツア 原作・脚本:デュシャン・コバチェヴィッチ 撮影:ヴィルコ・フィラチ 美術:ミリアン・クレカ・クリアコヴィッチ 音楽:ゴラン・ブレゴヴィッチ 出演:ミキ・マノイロヴィッチ/ミリャナ・ヤコヴィッチ/ラザル・リストフスキ−/スラヴィコ・スティマチ/エルンスト・ストッツナ−/スルジャン・トドロヴィッチ/ミリャナ・カラノヴィッチ
★1941年から始まった旧ユーゴスラヴィアの戦いと動乱の歴史を、マルコ(ミキ)とクロ(ラザル)という二人の男を通して描いた作品。41年、ユーゴ王国はナチス・ドイツに侵略された。クロを誘ってパルチザンに参加したマルコは、自分の祖父の地下室に弟やクロの妻などをかくまう。やがて重傷を負ったクロも地下室に運び込まれて……。95年カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。<allcinema>

◎この監督の作品は初見だが、実に良く過去の映画遺産を消化活用していることに恐れ入った。全篇の祝祭的な構成はフェリ−ニ的だし、フェリ−ニには欠けていたギャグの感覚をマルクス兄弟の作品(「オペラは踊る」)から巧みに頂き(マルコはまんまグル−チョだしイバンはハ−ポ?)、イバンに絡むチンパンジ−の使い方はキ−トンの「カメラマン」から頂戴して、170分という長尺の映画を飽きさせることなく見せてくれる。マルコの唇が扇情的なまでに赤かったり、マルコとクロが争奪する娘(ミリャナ)が宮沢りえそっくりだなと嬉しくなったり、アンダ−グラウンドから抜け出たヨバンが初めて見る日の出のシ−ンに涙したり、随所に挿入されたギャグに大笑いしたりしている内に、ユ−ゴに生まれ生きて祖国を喪った人々の不幸が惻々と胸を浸すような仕掛けになっている。アンダ−グラウンドの外に展開する景色を映画撮影の場面にした最大の仕掛け(ギャグ)には仰天させられた。ラストの漂う島には色々な意味が込められているのだろう。呑気呆亭