4月23日(火)「嵐を呼ぶ男」

嵐を呼ぶ男」('57・日活)原作・監督・脚本:井上梅次 脚本:西島大 照明:藤林甲 撮影:岩佐一泉 出演:石原裕次郎/北原三枝/金子信雄/小夜福子/芦川いづみ/青山恭二/白木マリ/岡田眞澄/笈田敏夫
石原裕次郎を一躍国民的スタ−にした大ヒット作。国分正一(石原)は銀座で評判の暴れん坊。弟の英次(青山)は兄を売り出そうと、女流マネ−ジャ−・美弥子(北原)に頼み込む。ジャズドラマ−を目指した激しい練習のなかで、正一と美弥子はお互いにひかれるものを感じ始める。いよいよライバル・チャ−リ−桜田(笈田)とのドラム合戦の前日、正一はトラブルに巻き込まれ左手をけがする。当日、左手の痛みから苦境に立った正一は、マイクを握り歌を唄い満場の拍手を浴びる。

◎リアルタイムで観た時は裕チャンの格好良さに痺れたのだったが、最近一連の裕次郎映画を見直すことになって、この時代の日活映画の尋常でない新しさに気が付くようになった。ドラマとしては正一と英次の兄弟愛が芯になるのだが、それがドラマとして成立するには二人の間を引き裂こうとする母親の存在がなくてはならなかった。その頑なな母親の役を小夜福子がリアルな存在感をもって造形している。その母親が亡き夫とその夫の破天荒さを引き継いだ正一への恨みを呑んで引きこもるアパ−トの映像が何度も映し出されるのだが、母の仕打ちに腹を立てて正一が悄然と去って行くシ−ンの、ライティングとキャメラの共同作業の素晴らしさには息を呑む思いをしたことだった。名人藤林甲さんに拍手を!呑気呆亭