4月20日(土)「落ちた偶像」

「落ちた偶像」('48・英)監督:キャロル・リ−ド 原作・脚本:グレアム・グリ−ン 撮影:ジョルジュ・ペリナ−ル 出演:ラルフ・リチャ−ドソン/ミシェル・モルガン/ボビ−・ヘンリ−
★ G・グリーンが自身の短編小説を脚色、C・リードが監督したサスペンスの佳編。舞台はロンドンに駐在する某国大使館、夫人を迎えに行って大使が留守にしている週末。大使の息子フェリッペは冒険談を聞かせてくれる執事ベインズを崇拝している。妻との関係が冷めていたベインズはタイピストのジュリーと愛し合っていたが、その事を嗅ぎつけたベインズ夫人が大使館ホールのベランダから落ちて死んでしまう。ベインズが殺したものと思い込んだフェリッペは何とか彼をかばおうとするのだが…。<allcinema>

◎父親が大使で母は病気がちで、家庭の匂いのしない大使館に独り住む少年の危うい精神構造を表すために、リ−ドは少年が密かに壁の穴に忍ばせて飼うペットの蛇を巧みに使う。蛇とは何か?蛇によって知恵を得たことでニンゲンの不幸が始まったと言ってよければ、この映画の主題である「嘘」が冒頭の蛇をまさぐる少年の指によって既に暗示されていたのである。蛇と紙ヒコ−キと階段と足跡という仕掛けを巧みに使ったリ−ドのサスペンスフルな作品であった。呑気呆亭