4月6日(土)「自転車泥棒」

自転車泥棒」('48・伊)製作・監督:ビットリオ・デ・シ−カ 脚本:チェザ−レ・ザバッティ−ニ 撮影:カルロ・モントウォリ 出演:ランベルト・マジョラ−ニ/エンツォ・スタヨ−ラ
★ 敗戦国の戦後のどん底を痛感させるネオレアリズモの秀作。思想風土の差はあれ同じような経験をした日本の映画がこの時期、民主主義礼賛の御用映画ばかりだったことを考えれば、芸術の独立性を保った当時のイタリア映画人の気質は見習うべきものがある。長い失業の末、映画ポスター貼りの職を得たアントニオは、シーツを質に入れ、代わりに仕事に必要な自転車を請け出し、六歳の息子ブルーノを乗せ町を回るが、ふとした隙に自転車が盗まれてしまう。それなしでは職を失う彼は、無駄と承知で警察に行くが相手にされず、自力で探すことにするが、ようやく犯人に辿り着いたところで仲間の返り討ちに遭いかけ、思い余って今度は自分で自転車泥棒を働くが……。教訓的という以上に感動的なラストにはやはりハンカチが必要な、デ・シーカと脚本家C・ザバッティーニの「靴みがき」に続く、素人俳演を用いたアクチュアルな映画作りの試み。悲痛な前作より日本人好みには合うだろう。<allcinema>

第二次世界大戦直後の荒廃したローマの街中を、父と子が盗まれた自転車を捜して歩くというだけの単純なストーリーの映画なのだが、その自転車がなければ明日から一家が食べて行けぬという切迫した事情が坦々と描写されて、その切実なリアリティが一種異様なサスペンスを観る者に与えた。ざらついたモノクロの映像が美しい映画である。映画の感想とは別に興味深かったのが、さすがに自転車王国イタリアだけあって、戦後当時の日本では無骨で重い自転車しかなかったのが、ここに登場する自転車は軽々と肩に担げる重量で、その走りもいかにも軽快で、息子やカミサンを我々のように後部座席ではなく、サドル前方のフレ−ムに乗せて走る走り方が面白かった。呑気呆亭