4月9日(火)「大菩薩峠第1部」

大菩薩峠第1部」('57・東映)監督:内田吐夢 原作:中里介山 脚本:猪俣勝人/柴英三郎 撮影:三木滋人 音楽:深井史郎 出演:片岡千恵蔵/中村錦之助/月形龍之介/大河内伝次郎/長谷川裕見子/丘さとみ
中里介山の死で未完のままとなった長編小説「大菩薩峠」を内田吐夢監督と片岡千恵蔵のコンビで映画化したシリ−ズの第一部。剣をとっては天下無敵の“音なしの構え”の机龍之介だが、彼の心の底には絶えず自分をさえ信じ得ぬ虚無の嵐が吹き荒れていた・・・。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎夫との神前試合に勝ちを譲ってくれと頼みにいったお浜(長谷川)を龍之介は犯すのだが、この長谷川のヌメヌメと纏わり付くような色気に掛かっては、龍之介が道を踏み外すのも無理はなく、その前段階に大菩薩峠での巡礼斬りを置いた中里介山の設定は見事という外ない。しかし、映画ではその辺りの説明が不十分で、介山がこの延々と続く長編小説で描き出そうとした宿命の暗さを映像化することは、残念ながら出来ていない。呑気呆亭