4月5日(金)「赤い河」

「赤い河」('48・米)監督:ハワ−ド・ホ−クス 原作・脚本:ボ−デン・チェイス 脚本:チャ−ルズ・シニュ− 撮影:ラッセル・ハ−ラン 音楽:ディミトリ・ティオムキン 出演:ジョン・ウエイン/モンゴメリー・クリフト/ウォルタ−・ブレナン/ジョン・アイアランド
★男性アクション映画の第一人者ホ−クスが、初めて試みた大作西部劇。物語は南北戦争前の1851年に始まる。セントルイスから出発した幌馬車隊がテキサス州境にさしかかった時、同行したダンスン(ウエイン)は南方に絶好の牧畜地があることを知り、親友グル−ト(ブレナン)とともに南へ旅立つ。彼らが赤い河に近づいた頃、幌馬車隊はインディアンに襲われ、やがて、唯ひとり逃れた少年マットが雌牛一匹を連れてたどり着く。ダンスンの残してきた恋人を含めて幌馬車隊は全滅だった・・・。
ダンスンはやがてリオ・グランデ近くに素晴らしい土地を見つけ、マットの雌牛と自分の雄牛を元に牧場建設にとりかかる。10年後、ダンスンは戦場から帰還したマット(クリフト)とともに一万頭の牛をミズ−リへ運ぶキャトル・トレイルを開始する・・・。
射ち合い、インディアンの襲撃、牛の暴走、男の友情など西部劇の定石をもれなく取り入れて、しかも、力強く構成したホ−クスの傑作。クリフトはマット役で鮮烈なデビュ−。哀愁を帯びたティオムキンのテ−マ曲も出色のでき。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎この映画のキ−ワ−ドは「心にささったナイフ」であり、キ−となる小道具は「腕輪」である。それが明らかになるのは、マットを追ってきたダンスンと、彼を名指して自分のテントに招き入れたテス・マレ−(アイアランド)との会話からである。マットを愛するようになっていたマレ−はダンスンの復讐を押しとどめようとするのだが、話している内にかつて自分が幌馬車隊に置き去りにした女とマレ−を重ね合わせて、ダンスンは決して忘れたことのない「心にささったナイフ」という、遙か昔別れ際に失った恋人が発した言葉を、マレ−の心を推し量るために“・・・のようだったか?”と発するのである。そして、マレ−の腕輪に目を止める。それはダンスンが別れ際に恋人に、必ず迎えに来るという証に与えた母親の形見であり、格闘のすえに殺したインディアンの腕にそれを見つけて彼女の死を知り、養子としたマットに与えたモノであった。“それをどうしたんだ?”と訊ねるダンスンに、マレ−はこともなげに“盗んだのよ”と言い放つ。そしてマレ−はその腕輪と「心にささったナイフ」という言葉によって、ダンスンの深く心に潜めた悲劇を悟り、その心の葛藤を理解するのである。そして、マレ−という鉄火な女の強さは、ダンスンとマットを繋ぐ悲劇の連鎖を断ち切るために、マットを追うダンスンに同行を、かつてダンスンの恋人がなし得なかったチャ−ジを申し入れるのである。腕を吊った三角巾に潜めたマレ−のデリンジャ−とテ−ブルの下で構えるダンスンのリボルバーに象徴される丁々発止のやりとりが、二人の役者の力とホ−クスの演出によって、見応えのあるいかにも映画的なシーンを形成したのだった。呑気呆亭