3月29日(金)「柳生武芸帳」

柳生武芸帳」('57・東宝)監督・脚本:稲垣浩 原作:五味康祐 脚本:木村武 撮影:飯村正 音楽:伊福部昭 出演:三船敏郎/鶴田浩二/久我美子/香川京子/大河内伝次郎/東野英治郎
★天下を揺るがす内容が記されているという柳生武芸帳。もともと柳生家に伝わっていたものが、今では柳生家、鍋島藩、そして薮大納言の家に一巻ずつ保管されていた。だが鍋島藩の一巻が、お家再興を願う龍道寺家の夕姫の手に渡ったことから、忍者の頭領である山田浮月斎は霞の多三郎と弟の千四郎を江戸に差し向ける。多三郎は夕姫に想いを寄せるようになり、浮月斎から破門を言い渡されてしまう。薮大納言の家にあった武芸帳が大久保彦左衛門の屋敷に移ったことを知った柳生但馬守は、息子の又十郎を女性に変装させ、屋敷に潜入させるのだったが…。
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五味康祐の未完の小説を映画化したために、この映画も2部の双竜秘剱まで作られただけで未完に終わっている。公開当時はその未完の理由を廻って天皇家の禁忌に触れたためではないかなどという憶測が飛び交ったと記憶している。この原作以降、柳生家の秘密を廻って漫画「子連れ狼」や輶慶一郎の「吉原御免状」などの作品が発表されて好評を博したのであった。この映画では三船も鶴田も久我も香川も若く溌溂としていて観ていて楽しくなる。稲垣の演出も好調で、当時の東宝映画の力を感じさせてくる作品である。浮月斎の東野英治郎も怪演である。呑気呆亭