3月22日(金)「拳銃無宿」

「拳銃無宿」('47・米)製作:ジョン・ウエイン 監督・脚本:ジェ−ムズ・エドワ−ド・グラント 出演:ジョン・ウエイン/ゲイル・ラッセル/ハリ−・ケリ−/アイリン−・リッチ/ブル−ス・キャボット
★。この映画の凄さは、拳銃による殺人を否定し、あまつさえヒーローすら正当防衛の現場でさえ銃を抜こうとしない点にある。非武装中立的西部劇が赤狩り以前には成立しえたという意味で驚愕のドラマであった。Quirt Evansはクライマックスの瞬間、悪の他者を殺すよりもみずからを殺してほしいと望み、銃を抜かなかった。それがペネロペへの純愛の表現ともなるのだが、こんなジョン・ウェインは初めて見た。「真昼の決闘」とは真逆で、クェーカー教徒に主人公は同化する。乱闘シーンでも銃は抜かず、牛泥棒襲撃シーンでも棍棒で戦うという徹底ぶり。銃所持反対という思想が貫かれ、じつに凄まじい映画なのである。内気ゆえにアル中になり、ガイ・マディソンに捨てられたというゲイル・ラッセルだが(当時はジョン・ウェインとの不倫疑惑もあったらしい)、その美しさは全盛期のロザリンド・ラッセルにも酷似して素晴らしい。彼女は高校ではジェーン・ラッセルと同級生だったらしいが……ラッセルつながりか。それにしてもアープの友人というQuirt Evansが実在の人物とは思われないのだが、どうなのだろう。エヴァンスという名はドルトン兄弟のような悪漢として記憶しているのだが。〈allcinema スベルバウンド〉

◎原題は「Angel and Badman」。製作がジョン・ウエインプロダクション。Angelをゲイル・ラッセル、 Badmanをウエインが演じている。傷ついたガンマンをクェーカー教徒の一家が助けるという設定が面白い。その一家の家長を演ずる役者さんと、母親役の役者さんの存在感がリアルで心地良い安心感を与えるので、安心して見ていられる作品になっている。ハリ−・ケリ−演ずる老保安官もラストに重要な役割を果たすという儲け役で、楽しげに演じている。Badmanのウエインが「拳銃無宿」という邦題に反して一人も拳銃で殺さないという、期待の外し方も巧妙で、脚本・監督のグラントの手柄の光る西部劇であった。こんな西部劇も好いものだ。もちろん、Angeのラッセルもウエインに銃を捨てさせるほどの西部劇のヒロインとしては異色の魅力を放っていた。呑気呆亭