3月21日(木)「ニュ−・オリンズ」

「ニュ−・オリンズ」(47・米)監督:ア−サ−・ル−ビン 脚本:エリオット・ポ−ル/デイック・ア−ヴィング・ハイランド/ハ−バオ−ト・J・バイバ−マン 撮影:ルシアン・アンドリオ 音楽:ナサニエル・フィンストン 出演:ルイ・ア−ムストロング/ビリ−・ホリデイ/アルトウ−ロ・デ・コルドヴァ/ドロシ−・パトリック/アイリ−ン・リッチ
★1917年のニューオリンズで、アルトゥーロ・デ・コルドヴァがベイスン・ストリートの帝王と言われていて、賭博場などを支配している所から始まります。当然ここではジャズが演奏されていますが、そこへオペラ歌手ドロシー・パトリックがやってきて、指揮者のリチャード・ヘイグマンに紹介される。この二人ともジャズに興味を持つが、ドロシーの母アイリーン・リッチはジャズを毛嫌いしている。コルドヴァとドロシーはお互いに惹かれあうが、ダウンタウンの取締りにより、それぞれシカゴやヨーロッパなどへ分かれてしまい、後はお決まりのストーリーが展開されるというストーリーです。
ロマンスとしては単純なもので、どうと言う事はありませんが、この映画の見所はトラディショナルジャズのミュージシャンが大勢出てくる事です。ルイ・アームストロングがかなりの役をやっていますが、他にズーティ・シングルトン、バーニー・ビガード、キッド・オリー、バド・スコット、レッド・カレンダーなど錚々たるメンバーが出演しています。
シカゴではミード・ラックス・ルイスのピアノが聞けますし、ラスト近くになると1940年代に飛びますが、ウディ・ハーマンが彼のバンドと一緒に出てきます。それに女中役のビリー・ホリデイが「Farewell to Storyville」他、かなり唄っていますが、この人の映画出演は少ないので貴重です。
ニューオリンズ・ジャズのスタンダード・ナンバーも多く演奏されていますが、ヘイグマンがショパンの幻想的即興曲を弾くシーンが面白いです。中間部のメロディにかかるとサッチモたちが首をかしげて、シュガー・ブラウンの「コーンクリブ・ブルース」の盗用だと言う所です。この曲名は聞いたことがないので、架空の名前ではないかと思いますが、実際には1918年にハリー・カロルがこのメロディに詞をつけて「I\'m Always Chasing Rainbow」という曲名で売り出しヒットしたポップスとして有名です。
それに最初の方で、サッチモたちが「Maryland, My Maryland」を演奏しているのを聞いたアイリーンが「メリーランドへの冒涜だ」というシーンも面白いです。この曲はもともとドイツ民謡「樅の木」ですが、メリーランド州歌であると同時にニューオリンズ・ジャズのスタンダード・ナンバーでもあります。〈allcinema ikeda〉

サッチモやホリデイなどの若き日の演奏を映像で見ることが出来る貴重な作品である。それと古き良き南部アメリカの映像も楽しめる。それに加えて賭博場を経営する男前のコルドヴァと良家の子女でありながら偏見を超える勇気を持つパトリックの恋模様をからめて、ドラマとしても楽しめる作品になっている。呑気呆亭