3月19日(火)「鉄腕ジム」

「鉄腕ジム」('47・米)監督:ラオ−ル・ウオルシュ 脚本:ヴィンセント・ロ−レンス/ホレイス・マッコイ 撮影:シド・ヒコックス 音楽:ハインツ・ロ−ムヘルド 出演:エロ−ル・フリン/アレクシス・スミス/ジャック・カ−スン/アラン・ヘイル/ウォ−ド・ボンド
★「海賊ブラッド」のエロール・フリンと、「永遠の処女」のアレクシス・スミスが主演する映画で、ヘビー級ボクシングの世界選手だったジェームズ・J・コーベット伝からヴィンセント・ローレンスとホレース・マッコイが脚色し「いちごブロンド」のラオール・ウォルシュが監督し、「我が心の歌(1942)」のシド・ヒコックスが撮影した。助演は、「いちごブロンド」のジャック・カーソンおよびアラン・ヘールを始めジョン・ローダー、ウィリアム・フローリー等である。

1887年、サンフランシスコのある銀行の出納係ジム・コーベット(フリン)は、紳士として立身出世を熱望していた。有力者で金持のウエーアの令嬢ヴイキー(スミス)が預金を引き出しに来た時、心臓の強いコーベットは金かを入れたカバンを持ち、無理に彼女の供をしてオリンピッククラブへ行き、そこの体育室でボクサーあがりの教師ワトスンとボクシングをして彼はギャリー判事に認められた。判事はヴイキーに彼をクラブ員に加えたいと語り賛成を得た。思いがけなく紳士の仲間入りができて、ジムは喜んだが父母はもっと喜んだ。彼の父は辻馬車屋アイルランド気質の荒っぽい男で、コーベット家はジムの二人の兄が父親そっくりなので、歌ったりけんかしたり毎日大騒ぎだった。
ジムを認めるのは判事だけで、オリンピッククラブ員は皆押しの強い彼を嫌っていたので、英国から有名なボクサーが来た時、ジムを打倒させようと試合させたところジムが勝ってしまった。
祝勝パ−ティで親友と大酒を呑んだ二人が翌朝眼覚めるとソルトレイク・シティに来しまっていた。そこへ、デラニーというボクシングのマネージャーが現れ、約束だとその晩ジムに試合を強いた。ジムはシスコへ変える旅費をかせぐために試合をし勝ち、自信を得たジムはプロボクサーに転向し連戦連勝。次第にジムはヘビー級ボクサーとして米国人に名を知られるようになった。時の世界チャンピオンはジョン・L・サリヴァンで、ジムはたまたま出会った彼を怒らせて選手権試合にこぎつける。試合は延々20ラウンドにおよび、ついにジムはサリヴァンをノックアウトし、選手権を奪ったのだった。その夜、祝賀宴を開いているところへ突然サリヴァンが現れ、ジムに伝説のベルトを与えた。選手にはなれたがとてもジョン・L・サリヴァンにはなれないと、ジムは初めて真に紳士らしいことを言った。それを聞いていたヴィキーは、彼のよさを初めて認めたのだった。(goo映画)

◎'87年当時はまだ州によってボクシングの試合の開催が認められていなかったらしく、ジムと友人が見に行った野外試合も警察の手入れを受けて、観客も捕まってしまう。その警察の留置所で一緒になった判事との出会いがジムの運命を開く契機となる。
チャンスを掴んでのし上がって行こうとするジムと、その押しの強さに異質な魅力を感じながらも反発するヴィッキ−の恋模様に、クラッシックなスタイルのボクシングの試合と、ジムの家族とその周辺の下町人種の生き生きとした生態を絡ませて、気持ちの良い文字通りの活動写真をウオルシュは見せてくれる。ラストのボンド演ずる敗者サリヴァンの潔さと、その態度に大きな衝撃を受けるジムの描写もいかにも映画的で心地良く、映画を観ることの醍醐味を味あわせてくれた快作である。呑気呆亭