3月13日(水)「わが町」

「わが町」('56・日活)監督:川島雄三 原作:織田作之助 脚本:八住利雄 撮影:高村倉太郎 音楽:真鍋理一郎 出演:辰巳柳太郎/南田洋子/高友子/大坂志郎/三橋達也/殿山泰司/北林谷栄/小沢昭一
★フィリピンの困難な道路建設に従事した男が、人力車をひいて娘と孫娘を育てあげるど根性物語を、明治・大正・昭和にわたって描く。川島雄三は敬愛する織田作之助の原作をもとに、男の意地と執念を短い時間の流れのなかで、テンポよく綴った。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎明治・大正・昭和、幼い娘を残されて、その娘が成人して孫を残し、その孫が成人してタ−ヤンに意見をするほどの娘になる。流れた時間は約40年か。ラスト、プラネタリュウムでフィリピンの南十字星を見ながら息を引き取ったタ−ヤンも70歳をはるかに超えていたろう。その時間の流れを川島雄三は淡々と描いて行く。その長屋の住人たち、殿山、北林、小沢といった芸達者たちの、辰巳に負けじと老けて行く、恐らくは熾烈な?、或いは嬉々としてか?、の芸比べを、例によってふはふはと笑いながら“若干の優劣が認められますな”などといって、撮影中の川島は面白がっていたのではなかったろうか。呑気呆亭