3月12日(火)「警察日記」

「警察日記」('55・日活)監督:久松精児 脚本:井出俊郎 原作:伊藤永之助 撮影:姫田真佐久 出演:森繁久彌/伊藤雄之助/三國連太郎/岩崎加根子/杉村春子/三島雅夫/十朱久雄/小田切みき/二木てるみ/宍戸錠
磐梯山麓の小さな町の警察署を舞台にして、その町に暮らす人々のひきおこすさまざまなエピソ−ドをスケッチ風に描く久松精児監督作品。中年のお人好しの吉井巡査(森繁)が捨て子の姉妹の世話をしたり、若い花川巡査(三國)がもぐり周旋屋にひっかけられた娘を出発寸前に押え、その娘に淡い恋心を抱いたり、またこの周旋屋の女をめぐって警察署長(三島)が職安の連中とやりあったり。その他、万引きと無銭飲食の女の哀しい話。あるいは気のいい馬車屋の話、捨て子が料理屋の女将にひきとられたあと、実の母が現れるといったエピソ−ドが盛りこまれた人情喜劇の佳篇。若き宍戸錠三國連太郎二木てるみなどの好演が印象的である。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎当時天才子役と言われた二木てるみは'49年の生まれだから、この作品のときは6歳か。巧すぎる!一緒に捨てられた弟を見守るてるみの眼差しは演技とは思えぬ感情を表していて、その胸の裡を思えば涙なしには見ていられないモノであった。こんな映画は映画館の暗がりの中で観るか、深夜密かに独りで観る他はあるまい。久松精児は田舎町のてんやわんやのエピソ−ドを、磐梯山麓の空気感さえ感じさせる駘蕩とした語り口で綴って破綻を見せない。心憎いばかりの職人芸である。呑気呆亭