3月5日(火)「素晴らしき哉、人生!」

素晴らしき哉、人生!」('46・米)製作・監督:フランク・キャプラ 原作:フィリップ・ヴァン・ドレン・スタ−ン 脚本:フランセス・グッドリッチ/アルバ−ト・ハケット/フランク・キャプラ 撮影:ジョセフ・ウォ−カ−/ジョセフ・バイロック 音楽:ディミトリ・ティオムキン 出演:ジェ−ムズ・スチュワ−ト/ドナ・リ−ド/ライオネル・バリモア/ト−マス・ミッチエル/ヘンリ−・トラヴァ−ス
★主人公のジョージという男は、いつも何処かでツキに見放され、逆境にばかり立ち向かう運命にあった。自分のミスではなく大金を失った彼は、全てに絶望して自殺を図る。ところが、12月の冷たい河に飛び降りようとしたとき、彼より先に一人の男が身を投げて救けてくれと叫んだ。あわてて救けたジョージに、男は、自分は見習い天使だと告げるが…。映画はまず、挫折つづきのジョージの人生を語る。この、希望が幾度となく打ち砕かれるエピソードの積み重ねには、ジョージばかりではなく観る側も、その理不尽さに怒りを感じずにはいられないだろう。そして、天使の案内する“もし彼が生きていなかったら”という仮定の世界で、彼は自分の存在理由をかいま見る事になる。果たして彼は自殺を思いとどまる充分な理由を見つけることが出来るのか、という部分がこの作品の要になるのだが、安易なハッピー・エンドに逃げていないのはF・キャプラの理想主義の賜物である。<allcinema>

◎主人公のジョージを演じたジェ−ムズ・スチュワ−トという役者さんは、これまでの芸歴「砂塵」「スミス都へ行く」などを見ると、善意の人ではあるが一筋縄では行かないしたたかさを併せ持つ個性を、自然に表現してしまう所がある。しかし、この作品ではそのスチュワ−トの良さを生かし切れていない。それは主人公の人生をツキに見放されたモノに設定した脚本によるのだが、スチュワ−トのフアンとしては、彼が我を失ってトマス・ミッチェルの襟をつかんで怒りを露わにしたり、家族に苛立ちをぶつけたりするようなシ−ンは見たくなかった。彼ならこの窮地をしなやかな身振りで切り抜けるはずなのである。それを、たかが八千ドルのために自殺などしようとしたり、守護天使に自分の居ないパレレル・ワ−ルドを見せられて自分の存在意義を悟ったりするようでは、我等がスチュワ−トとは言えぬだろう。なぜ、ポッタ−と闘わないのか。ワタクシ的には、八千ドルを着服したポッタ−の悪事を目撃している執事(常にポッタ−の傍らに印象的に立つ)が、いつになったらそのことを暴露するのかと思いながら見ていて、まったくそのことがなかったハッピ−・エンドに頷けぬものを感じたのだった。呑気呆亭