2月20日(水)「夜の門」

「夜の門」('46・仏)監督:マルセル・カルネ 脚本:ジャック・プレベ−ル 撮影:フィリップ・アゴスティ−ニ 音楽:ジョゼフ:コズマ 出演:イヴ・モンタン/ピエ−ル・ブラッス−ル/セルジュ・レジアニ/ナタリ−・ナティエ/ダニ−・ロバン/ジャン・ビラ−ル/レイモン・ビシュエ−ル
第二次世界大戦直後のパリを舞台に、戦中のレジスタンス運動の同志だった鉄道員たちと、彼らを裏切り密告した男たちの生活を描く。後年人気シャンソン歌手となったイヴ・モンタンのヒット曲「枯葉」は、この映画の主題歌としてジョゼフ:コズマが作曲したもの。
(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎1945年の二月のパリが舞台。パリは解放されたがまだ東部戦線では戦闘が続いていた。ディエゴ(モンタン)はレジスタンス仲間の死を家族に告げるためにパリに着くのだが、電車の中で不思議な男(ビラ−ル)に出会う。密告されてゲシュタポに捕まって死んだと思っていた仲間レイモン(ビシュエ−ル)は生きていて機関手の職に復帰していた。再開を祝してレイモンの家族と出掛けたレストランで自ら「宿命」と名乗る不思議な男にまた出会う。男は懐から取り出したハ−モニカで不吉なメロディの曲(枯葉)を奏で始める。ディエゴはそのメロディに唆されるようにして宿命の美女との出会いの夢を語り始めるのだが、男に促されて見た窓の外に夜の闇に浮かぶ女の顔を見てしまうのだった。
その女マル−(ナティエ)とディエゴはギリシャ・ロ−マの彫像やガラクタの立ち並ぶ夜の倉庫で再会する。ディエゴが腕に抱えたレイモンの幼い息子を見て、“寝てる子って美しい”とマル−、“ウイ、目覚めながら夢を見てる男は…、ボクは夢を見てる…”との会話から始まり、南の島イ−スタ−島での二人の不思議な因縁にまで至る会話の妙。全てのディアロ−グを(訳文だが)書き留めてみたいと思わせるプレベ−ルの真骨頂である。密告者のギ−(レジアニ)の策謀によりマル−は別れようとした夫(ブラッス−ル)の銃弾に倒れ、枯葉のメロディの流れる中、全ては「宿命」の男の予言の通りに人は死に人は生きるのだった。
殆どが夜のシ−ンに終始するドラマを捉えた映像が美しい。マルセル・カルネはディアロ−グの詩人ブラッス−ルと「枯葉」のコズマと共にこの傑作を後世に遺してくれたのだ。呑気呆亭