2月9日(土)「戦火のかなた」

「戦火のかなた」('46・伊)監督:ロベルト・ロッセリ−ニ 脚本:アルフレッド・ヘイズ/セルジョ・アミディ/クラウス・マン/フェデリコ・フェリ−ニ 撮影:オッテロ・マルテック 出演:マリア・ミ−キ/ガ−ル・ムア/ドッツ・M・ジョンソン/カルメラ・サツィオ/ロバ−ト・ヴァン・ル−ン/ハリエット・ホワイト/ジュリエッタ・マシ−ナ
★1943年7月、シチリアに上陸した連合軍によってイタリアの街は解放されていった。これは、その連合軍イタリア北上を軸に、各地で展開された戦争をめぐっての6つのドラマである。(1)シチリア。偵察隊の手引きをしてくれた村娘と共に城塞に残る米兵。気のいい彼は家族の写真を見せようとライターを点けるが…。(2)ナポリ。酔っ払った挙げ句に靴を盗まれた黒人MPが、犯人の少年を捕まえて家に案内させるが彼がそこで見たものは…。(3)ローマ。米兵が知り合ったひとりの娼婦こそ、彼がかつてひそかに恋焦がれていた少女だった。だが、変わり果てたその姿に米兵はまるで気づかない…。(4)フィレンツェパルチザンの恋人が負傷したと聞き、前線へ向かう米軍看護婦。その彼女の目の前でひとりのパルチザンが撃たれた…。(5)ロマーニャ地方。山中の修道院に宿を求める三人の従軍牧師の前に、宗教の壁が立ち塞がる…。(6)ポー河畔。共に戦う連合軍兵士とパルチザン兵だが、彼らにもドイツ兵の魔手が迫っていた…。
 素人俳優を起用し、徹底したリアリズム・タッチで描き出した戦争群像で、「無防備都市」(45)と並んで、ロッセリーニの、というよりは戦後イタリアの生んだ傑作となっている。その圧倒的な迫力と胸をえぐるようなエピソードは、ドラマとしての見応えもさることながら、痛切に戦争での悲劇を物語る。日本初公開時は(3)のエピソードがカットされた97分版であった。<allcinema>

◎前年の「無防備都市」に比べるとオムニバス形式にしたために話が錯綜して訴求力に欠ける憾みがある。それぞれの挿話にはそれぞれに現実の出来事の裏付けが有るのだろうが、当事者たちの想いが強すぎて、全体として何を言いたいのかが分らなくなってしまう。挿話を三つくらいに絞ってその挿話を貫く人物なり事件なり言葉なりを設定すれば良かったのではないかと、半世紀以上も経った今だからこそ無責任なことを言えるのでしょう。呑気呆亭