1月5日(土)「男はつらいよ・フ−テンの寅」

男はつらいよ・フ−テンの寅」('70・松竹)監督:森崎東 原作・脚本:山田洋次 脚本:小林俊一/宮崎晃 撮影:高羽哲夫 音楽:山本直純 出演:渥美清/倍賞千恵子/前田吟/森川信/三崎千恵子/新珠三千代/香山美子/花沢徳衛/左卜全
森崎東監督による一編。旅先での寅次郎を中心にしている点が山田洋次のものと少々異なる。湯の山温泉の旅館で番頭をつとめるハメになった寅さんは、おかみ(新珠)に想いを寄せるが例によって片想い。シリ−ズの中では異色作だが、森崎=山田両者がミックスした味わいはなかなかのもの。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎美しさの底に冷たさを蔵する新珠三千代のマドンナは、寅さんに釣り合う訳がないことは誰にも分ることなのだが、その落差を山田洋次以下の脚本陣が上手く埋めて見せる。特筆すべきは老いたテキヤの成れの果てを演ずる花沢徳衛の怪演である。言葉を発せぬ思いを顔と身体を捩じるように使って寅に伝える場面では、泣いていいのか笑っていいのか、見ているこちらも思わず身体を捩じって涙を流させられるのである。呑気呆亭