平成25年1月3日(木)「男はつらいよ」

男はつらいよ」('69・松竹)監督・原作・脚本:山田洋次 脚本:森崎東 撮影:高羽哲夫 音楽:山本直純 出演:渥美清/倍賞千恵子/前田吟/森川信/三崎千恵子/光本幸子/志村喬/笠智衆
★世界的な長寿シリ−ズの記念すべき第一作。中学の時に親とケンカして家を飛び出した車寅次郎は、全国を渡り歩く香具師になった。両親の死を風の便りに知った寅次郎が、矢切の渡しから故郷・柴又へ里帰りを果たし妹・さくらの結婚を助けようとするが、見合いの席をひとりでぶち壊してしまう。そして寅さん自身は帝釈天のお嬢さん(光本)に思いを寄せるが、残念ながら失恋に終る。シリ−ズの基本パタ−ンはほぼ出そろったが、唯一寅さんのキャラクタ−がまだ洗練されておらず、かなり怒りっぽいチンピラの印象が強い。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎ワタクシの年齢(67歳)以上の人なら、渥美清のTVへの登場を記憶しておられる方も多いと思う。それは、NHKの「夢であいましょう」ではなくて、題名を忘れてしまったが、深夜の番組にぶっ壊れた顔の得体の知れない存在感を見せるチョイ役の変なヤツという感じの登場だった。その変な奴がTVには絶対に登場しそうもないテキヤの寅という役で、小さな青白いブラウン管の中に、四角い顔で仁義も切らずにいきなり出現してから、すべては始まったのだった。その破天荒なオトコに視聴者はみるみる引きつけられたのだったが、その登場と同じいきなりの退場が、寅のハブに咬まれての頓死で終わった時に、我々は等しく衝撃を受け、中には“なんであんないい奴を殺しやがった!”との怒りの電話をTV局に寄せた連中も居たと聞く。だが、常識に掛からぬ破天荒なオトコにはまことに相応しい頓死であったと、大多数の視聴者は思ったはずである。その寅を映画のスクリ−ン上に如何にして生き返らせるかに原作・監督・脚本の山田洋次の苦心があったのである。呑気呆亭