12月25日(火)「すっ飛び駕」

「すっ飛び駕」('52・大映京都)監督:マキノ雅弘 原作:子母澤寛 脚本:伊藤大輔 撮影:宮川一夫 音楽:鈴木静一 出演:大河内傳次郎/黒川弥太郎/三浦光子/河津清三郎/長谷川裕見子/南条新太郎/橘喜久子
★読売新聞で連載されていた子母澤寛の原作を元に、伊藤大輔が脚本を書き、マキノ雅弘が監督した作品。撮影は黒澤明監督作品でも評価の高い宮川一夫が担当している。表向きはお城のお数寄屋坊主、実際は街中でゆすりたかりを業としている河内山宗俊(大河内傳次郎)を主人公にした物語。たまたま若い侍を救った宗俊は、その若侍の父親がある藩の筆頭家老だったが、作事家老一味の不正を摘発しようとして、逆に殺されてしまったことを知る。その若侍は父親が残した悪党一味の不正を証明する書類を持っていたから、狙われていたのだった。河内山宗俊が若侍を助けて悪者退治をする痛快時代劇である。(DVDの解説)

◎平和・三色・ドラドラみたいな映画で、監督・脚本・撮影のトリオにこれだけの才能が集まると、これほどに完璧な映画が出来るのかと感嘆させられる。河内山宗俊物では最高作であろう。出演者の中では直次郎の河津清三郎が三千歳が惚れるほどの男かということでやや難があるが、大河内傳次郎はまさに河内山にぴったりで、森田屋の黒川弥太郎も渋い。河内山に惚れるお銀の三浦光子も色気があって好ましく、金子市之丞の南條新太郎も若々しくてよろしい。中でも出色は河内山宗俊の隠れ家を取り仕切るおくま役の橘喜久子の存在感である。宗俊以下の悪党たちに伍してちっとも退かず、却って時にピシャリとたしなめるこの小柄なおくま婆さんあってこそ、河内山宗俊が後事の憂いなく大芝居を打つことが出来たのである。呑気呆亭