12月18日(火)「キャット・ピ−プル」

「キャット・ピ−プル」('42・米)監督:ジャック・タ−ナ− 脚本:ウイット・ボディ−ン 撮影:ニコラス・ムラサカ 出演:シモ−ヌ・シモン/ケント・スミス/トム・コンウェイ
★造船デザイナ−のオリバ−は、動物園の黒豹の檻の前で、デザイナ−志望の美しい娘イリ−ナと知り合う。ふたりはやがて愛し合い結婚するが、彼女はオリバ−にキスさえ許そうとしない。イリ−ナは猫族の血筋をひくひとりで、伝説によれば猫族の女は人間と結ばれると豹に変身し、相手を喰い殺してしまうと言い伝えられており、彼女はそれを恐れていたのだ。オリバ−はイリ−ナのことを同僚のアリスに相談する。だが、イリ−ナは嫉妬によって黒豹に変身し、ふたりをつけ狙う。夜のシ−ンや姿を見せない黒豹など造形的要素によって恐怖感を生み出したホラ−映画の古典的名作。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎シモ−ヌ・シモンという女優さんはこの映画のヒロインを演ずるために生れて来たような人だ。このキャスティングとジャック・タ−ナ−の演出と撮影のニコラス・ムラサカ(日系?)がこの映画を恐怖映画として成功させた所以であろう。それと同時に、我々東洋の人間には理解しがたい「猫族」というものへの根源的な恐怖を描いたウイット・ボディ−ンという脚本作家の手柄もあろう。しかしそれも、このまさに「猫族」の生れじゃないかと思わせるような雰囲気を漂わせるシモ−ヌ・シモンなしには有り得なかった。恐怖は恋人のオリバ−が贈ったペットの黒猫のイリ−ナに向ける総毛を逆立てた敵意の表明から始まって、ペットショップでの騒ぎと、カナリアを捕まえようとしてつい殺してしまうことで己の血筋を自覚してしまうイリ−ナ、付け狙われるアリスの恐怖、そしてラスト、自らの血を絶やすために黒豹の檻を開けて、その豹の一撃で命を落しながらもまだ猫族の爪の動きを見せるイリ−ナの手…。様々な恐怖の仕掛けが楽しめる傑作である。呑気呆亭