12月5日(水)「マルタの鷹」

「マルタの鷹」('41・米)監督・脚本:ジョン・ヒュ−ストン 原作:ダシ−ル・ハメット 撮影:ア−サ−・エディスン 音楽:アドルフ・ドイッチェ 出演:ハンフリ−・ボガ−ト/メリ−・アスタ−/ピ−タ−・ロ−レ−
★31年の「マルタの鷹」(監督ロイ・デル・ルース、“SATAN MET A LADY”(監督ウィリアム・ディターレ)に次ぐ、ダシール・ハメットのミステリー3度目の映画化で、J・ヒューストンの初監督作品。“マルタの鷹”と呼ばれる彫像をめぐる争いに巻き込まれた私立探偵サム・スペードの活躍を描く。謎の美女(M・アスター)、不気味な風貌の小男(P・ローレ)、巨体の悪漢(S・グリーンストリート)らが入り乱れる中、ボギー扮するスペードの鮮やかな存在感が作品を名状しがたい域に昇華させている。そしてヒューストンのタイトな演出は、強烈なインパクトを各シーンに与えながら、ひとつの至宝を形作った。誕生した瞬間から、ハードボイルド映画の代名詞となるべき運命であった逸品。これ以降に製作されたこのジャンルのあらゆる作品の雛型と言っても過言ではなかろう。〈allcinema〉

◎誰に聞いてもこの映画は傑作だと言うが、今の時点で見直してみるとアクションよりも会話による闘いが目立って、それほどスッキリとした印象が残らない。不気味な風貌の小男のピ−タ−・ロ−レ−も「M」の怪演に比べれば恐ろしくないし、スペ−ドがいかれる美女(アスタ−)もミスキャスト(「深夜の告白」のスタンウイックだったら良かったのに!)で、ボギ−が目立つだけの映画になっている。スペ−ドが女との別れ際に言う台詞、“多分君にはわからないだろう、男は自分の仲間が殺されたら黙っちゃいない、そういうもんだ。探偵稼業で生きてるんだ…”によって、スペ−ドのこれまでの行動の動機が明かされるのだが、この後も長々と続けられるこの台詞は説明的に過ぎて、巻き上げた1000ドル(殺された同僚のカミサンに上げればいいのに)も警察に渡したりして、結局スペ−ドって、ハ−ドボイルドじゃなくって善い人だったんだ、とオチが付く。呑気呆亭