12月4日(火)「群衆」

「群衆」('41・米)監督:フランク・キャプラ 脚本:ロバ−ト・リスキン 撮影:ジョ−ジ・バ−ンズ 音楽:ディミトリ・ティオムキン 出演:ゲ−リ−・ク−パ−/バ−バラ・スタンウイック/ウォルタ−・ブレナン/エドワード・アーノルド
★諷刺に満ち満ちた傑作だ。
冒頭「自由な新聞社(Free Press)」と書かれた新聞社の看板が「合理的な新聞社」と変えられるシーンから始まり、新聞社内のリストラへと話がつながる。女性記者アン(バーバラ・スタンウィック)もクビを言い渡され、自棄になって書いたのが「ジョン・ドゥーからの手紙」。
ところがこのジョン・ドゥーからの手紙が話題になったことから、引き続き記事を展開することになり、急遽実在の人物としての「ジョン・ドゥー」をでっちあげなくてはならなくなる。オーディションの結果選ばれたのがジョン・ウィルビー(ゲイリー・クーパー)というマイナーリーグの元投手。彼の名前を冠した記事は大評判となり、ラジオに出演したジョン・ドゥーの「もっと隣人愛を!」という演説がきっかけで、各地に「ジョン・ドゥー・クラブ」が結成されていった。実はそこには新聞社社長D・B・ノートンエドワード・アーノルド)の、ある思惑があった…。〈allcinema=黒美君彦〉

◎前年の「西部の男」でコンビを組んだク−パ−とブレナン(大佐)との浮浪者(ho-bo)コンビが楽しい。ク−パ−のハ−モニカとブレナンのオカリナのご機嫌なセッションが、右に左に奔騰する「ジョン・ドゥ−=ヒステリア」の合間に人間的なアクセントを与えて、この作品を月並みな感動作とすることから免れさせている。しかしながら、71年後のこの時代にこの映画を見た感想としては、其の後のアメリカという国の変貌に危惧の念を抱かざるを得ない。一体今の米国の何処に「ジョン・ドゥー・クラブ」が有るだろうか?呑気呆亭