11月30日(金)「ごろつき船」

「ごろつき船」('50・大映京都)監督:森一生 原作:大仏次郎 脚本:成沢昌茂 出演:大河内伝次郎/月形龍之介/相馬千恵子/上田吉二郎/加東大介/本間謙太郎
大仏次郎の小説の映画化である。監督は大映の時代劇を確立した功労者の一人森一生で、主演は無声映画からの大スタ−大河内伝次郎、共演は同じく無声映画時代から活躍していた月形龍之介。その他、個性派として活躍した上田吉二郎や加藤大介も出演している。幕末の頃の蝦夷地を舞台に、蝦夷地を支配していた松前藩の家老が廻船問屋と組んで、当時禁止されていた密貿易を行なっていた。そして、別な廻船問屋に濡れ衣を着せ、殺害してしまうのだった。危うく逃れた廻船問屋の娘と若侍は一人のアイヌに助けられる。大河内伝次郎演じるこのアイヌの正体は…。DVDの解説より

大河内伝次郎月形龍之介の間を揺れるアイヌの血を引く女を演ずる相馬千恵子がいい。家老の弟ではあるが妾腹の身のゆえに日陰者の剣の達人を演ずる月形は、このアイヌの血を引く女をその合い似た境遇ゆえに愛するのだが、その女の心が主人公の大河内に向かって傾いて行くことに怒って決戦を挑む。物語としてはご都合主義で、アイヌの描き方もまるでアメリカ・インディアンのようで戴けないのだが、最後に決戦の果てに爆死する月形の屈折した心情には一掬の涙をそそがざるを得ない。呑気呆亭