11月29日(木)「四つの恋の物語」

四つの恋の物語」('47・東宝)監督:豊田四郎/成瀬巳喜男/山本嘉次郎/衣笠貞之助 脚本:黒澤明/小国英雄/山崎謙太/八住利雄 撮影:川村清衛/木塚誠一/伊藤武夫/中井朝一 出演:池部良/久我美子/木暮実千代/沼崎勲/榎本健一/若山セツ子/河野秋武/浜田百合子
★題名の示すとおり、豊田四郎成瀬巳喜男山本嘉次郎衣笠貞之助という4人の監督によるオムニバス作品。女学生と高校生の淡い恋心を描く「初恋」(脚本:黒澤明)、愛する男の心を察してわざと愛想づかしを言い、男のもとを去っていく女を描く「別れも愉し」(脚本:小国英雄)、三枚目役者と踊り子の他愛ない恋を描く「恋はやさし」、空中ブランコ乗りの命がけの恋を描く「恋のサ−カス」の4話からなる。
(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎第一話の「初恋」はいかにもその題名のとおり、すれていない少女と学生のうぶな恋をコミカルに描いて後味の良い作品。第二話の「別れも愉し」は、同年の黒澤明の「素晴らしき日曜日」に出ていた沼崎勲と木暮実千代のミスマッチによって、成瀬にしてはどっちつかずの出来の作品となった。第三話の「恋はやさし」は、浅草のオペレッタとはこういうモノだったのかと参考にはなったが、エノケンという役者のクサさ(但し'45年の「虎の尾を踏む男達」では快演)が鼻に付いて楽しめなかった。第四話の「恋のサ−カス」は、「空中ブランコ殺人事件」の実地検証という設定がまず意表を突く。その検証の過程で明らかになる入り組んだ「恋」の模様がエキセントリックで、浜田百合子という女優さんの日本人ばなれした容姿とともに、どこかフランス映画のような趣があって、映画としては一番楽しめた作品であった。呑気呆亭