12月1日(土)「西鶴一代女」

西鶴一代女」('52・新東宝)製作:児井英生 監督:溝口健二 原作:井原西鶴 脚本:依田義賢 撮影:平野好美 出演:田中絹代/菅井一郎/松浦築枝/宇野重吉/進藤英太郎/沢村貞子
井原西鶴の「好色一代女」をもとに、溝口健二が構成を練り、依田義賢が脚本を書いた「雨月物語」と同じく後世の映画作家達に多大な影響を与えた作品。'52年度のヴェネチア国際映画祭において、国際賞を受賞している。若くて美しい娘お春(田中)が、転落していく様を描いており、幸せになりかけては破綻する人生を、異常なくらい執拗に鮮明に描ききった溝口ならではの傑作である。映画において常に美しく撮られることを求める女優が、醜い顔を晒さなければならないこの作品。溝口監督同様に田中絹代という女優の凄さも改めて思い知らされる作品である。(DVDの解説より)

◎“こりゃあアンマリだ!”というのが、DVDで見直しての率直な感想であった。若い頃に観た時には巨匠溝口の作品であるということから、いわば拝見させて頂くという態度で見たために圧倒された記憶が残っているが、この年(67歳)になって見直すと、これでもかこれでもかと一人の女を浮かび上がらせては突き落とすという、サディスティックな脚本と演出が、映像がリアルであるだけにかえって嘘っぽく思えてくる。西鶴はこの女の物語に「好色一代女」と名付けた。その西鶴の人間を見詰める厳しくも包容力のある視点がこの映画には欠けている。呑気呆亭