11月21日(水)「海外特派員」

「海外特派員」('40・米)監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:チャ−ルズ・ベネット/ジョ−ジ・ハリスン 撮影:ルドルフ・マテ 音楽:アルフレッド・ニュ−マン 出演:ジョエル・マクリ−/ラレイン・デイ/ジョ−ジ・サンダ−ス/ハ−バ−ト・マ−シャル
★'39年初頭、戦争勃発の危機に揺らぐヨーロッパの取材に、一人の米国人記者ジョーンズ(J・マクリー)が派遣された。ロンドンに着いた彼は、戦争防止同盟の要、オランダの元老ヴァン・メアに会うが、メア老はアムステルダムの平和会議会場前で射殺されてしまう。しかし、犯人を追跡するうち迷い込んだ風車小屋で、彼はナチの手で誘拐されたメア老を発見、死んだのは替玉と知る。そして、警察へ知らせて戻ってくると、そこは既にもぬけの殻だった…。飛行機が海中に突っ込むまでのショットに注目。ヒット仕掛人、W・ウェンジャー製作の反ナチ宣伝映画だが、ハリウッドに渡って初めて本領発揮したヒッチコック演出が冴え渡る。<allcinema>

◎傑作として名高い作品だが、ヒッチコック好きではないワタクシがこの映画を録画しておいたのは、主演がジョエル・マクリ−だからだった。この俳優さんはどんな作品に出ていてもまったく変わらずジョエル・マクリ−であるところが面白い。言ってしまえばダイコン役者なのだろうが、妙に好ましいダイコンなのである。それは「大平原」「西部の王者」「落日の決闘」「死の谷」という一連の西部劇中でも、大して強そうでもないのに妙にオンナに持てるヒ−ロ−を演じて、それなりに存在感を示してその作品を凡作たらしめないところがあるのである。この映画でも決して望んで(彼の望みはヒロイン、ラレイン・デイとの結婚のみ!)ヒ−ロ−たらんとするのではないが、予期せぬ巡り合せで事件に巻き込まれて行くのである。そのダイコン役者ジョエル・マクリ−が、晩年に至ってサム・ペキンパ−の傑作「昼下がりの決斗」において、その印象を終生忘れることの出来ない老いたるヒ−ロ−を奇跡的に演じ得たのは、それこそ映画というモノの玄妙不可思議な魔術に依るのだろうか?呑気呆亭