11月20日(火)「ピグマリオン」

ピグマリオン」('38・英)監督:アンソニ−・アスキス/レスリ−・ハワ−ド 原作・脚本:ジョ−ジ・バ−ナ−ド・ショウ 撮影:ハリ−・ストラドリング 出演:レスリ-・ハワ−ド/ウエンディ・ヒラ−/メアリ−・ロ−ア/ウィルフリッド・ロ−ソン
★ 後にミュージカル「マイ・フェア・レディ」となることで知られるB・ショウの戯曲の、彼自身による脚本での映画化で、監督は主演のハワードとA・アスキスが共同で当たった。彫刻が趣味の王ピグマリオンが自分の彫った人形ガラティアに恋をし、神に祈ってそれに魂を入れてもらうというギリシア神話の挿話の、ショウ一流の辛辣な翻案で、王は音声学者ヒギンズ教授に、人形は花売り娘イライザに、そして舞台は天界からロンドンに変わる。
 ヒギンズは下層の訛を聞き分ける名人で、その晩もイライザの丸出しのコックニーに聞き惚れてはメモを取っていた。それがちょっとした騒ぎになって仲裁に入ったピカリング大佐こそ、彼が会いたく思っていた、やはり言語学の権威。早速、大佐と意気投合した教授は、自分ならこの貧相な下町娘を半年でレディに生まれ変わらせてみせる--と軽口を叩く。これを真に受けたイライザは教授宅に強引に押しかけ、そこで猛特訓を受け、手始めに教授の母のお茶会に列席してみるが、言葉使いはよくなっても話の内容たるや…。すっかりしょげかえるイライザを叱咤した教授は、来たるトランシルヴァニア大使のレセプションに向けて、彼女を再度鍛え直し、今度は皇太子の最初のダンスの相手に選ばれる栄誉を拝するほどに完璧な淑女に磨き抜くのだったが…。<allcinema>

◎若い頃京橋のフイルムセンタ−で観てその面白さに驚いた記憶が有る。そのDVDを手に入れて再見。ワタクシ的にはヘプバ−ン主演の「マイ・フェア・レディ」よりも、映画的な面白さという意味ではこちらに軍配を上げたい。ヒロインのイライザを演ずるウエンディ・ヒラ−のがさつな花売り娘から淑女への変身ぶりの演技力もさることながら、彼女を囲むヒギンス教授、ピカリング大佐、ヒギンスの家政婦、ヒギンスの母などの温かいアンサンブルが心地良く、映画を観るということの至福を味あわせてくれるからである。その例を二三挙げると、家政婦が風呂に入ったことのないイライザを風呂に入れるシ−ンの面白さ。教授と大佐の協力で磨かれたイライザが、晴れの舞踏会で踊るシ−ンでは、ウエンディ・ヒラ−という女優さんのいかにも英国人らしい威厳に満ちた立姿と、美しい肩甲骨に圧倒されてしまったのだった。呑気呆亭