11月15日(木)「次郎長三国志・海道一の暴れん坊」

次郎長三国志・海道一の暴れん坊」('54・東宝)監督:マキノ雅弘 原作:村上元三 脚本:小川信明/沖原俊哉 撮影:飯村正 音楽:鈴木静一 助監督:岡本喜八 出演:小堀明男/森繁久彌/越路吹雪/青山京子/水島道太郎/川合玉江/河津清三郎/志村喬/上田吉二郎
★実質上マキノ雅弘のオリジナルによるシリ−ズの最高作。石松はお蝶の法事を終えた次郎長の愛刀を讃岐の金比羅様へ納める役を仰せつかる。ある娼家で夕顔という名の娼婦に惚れた石松は、身愛山鎌太郎のはからいで夕顔を身請けすることになる。ところが、その帰途、ワラジを脱いだ都鳥の吉兵衛の闇討ちにあい、無念の死を遂げる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎この第八作をシリ−ズ中の最高作に推す人が多いが、これは「次郎長三国志」という英雄譚の番外編というべきで、映画としては石松と娼婦の夕顔(川合玉江)の物語である。マキノにとっての理想と山田宏一氏とのインタビュ−(「マキノ雅弘の世界」)で語っているように、“笑っていても泣いているようなうるんだ眼をしたオンナ”に石松が惚れて惚れられて、云えば「夕顔」という源氏物語の一帖の名を取った夢のような一編である。♪夕顔は宵には咲けど 朝には 身を賈る花ぞ 恋忘れ草♪その夢を見たまま石松は闇討ちに遭って死に、斬られた瞬間に閉じられていた目を開いて「開眼」する。マキノはその石松(森繁)に、「ヤクザの稼業をやっていても、ヤクザの生活はするな」という自身のヤクザ観を語らせる。マキノはこの一編に「石松開眼」と名付けたかったのだそうだが、東宝宣伝部の大学出が「海道一の暴れん坊」という身もふたもない題名を付けてしまったとのことである。この第八部で初めて小政(水島道太郎)が登場する。呑気呆亭