11月8日(木)「チャップリンの独裁者」

チャップリンの独裁者」('40・米)製作・監督・脚本:チャ−ルズ・チャップリン 撮影:ロ−ランド・トザロ− 出演:チャ−ルズ・チャップリン/ジャック・オ−キ−/ポ−レット・ゴダ−ド
チャップリンが製作・監督・脚本・主演(二役)して痛烈にヒトラ−の独裁政治を批判した作品。'39年9月、ドイツがポ−ランドに侵入し、第二次大戦が勃発したその月にこの映画の撮影を開始し、ドイツがフランスを屈服させた'40年に完成。第二次大戦初期のドイツが破竹の勢いで侵攻している時代に、ヒトラ−を戯画化したこの映画は、製作中に脅迫が絶えなかったといわれる。チャップリンは仮想国トメニアの独裁者ヒンケルと、彼とうりふたつのユダヤ人の理髪師の二役をこなす。そして、世界制覇の野望に狂う独裁者の仮面をはぎ、ユダヤ人弾圧の非人道性を訴えた。さらに、全世界の人々に自由のために闘うことを呼びかける…。オ−キ−が扮したナバロニは、ムッソリ−ニを皮肉った痛烈なパロディになっている。チャップリン初のト−キ−作品で、チャップリンのトレ−ドマ−クである山高帽・ドタ靴・ステッキ姿の最後の作品でもある。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎近頃の日本の高校生たちには日本とアメリカが先の大戦で戦ったことは、歴史上の事実として認識されてはいないと聞く。一方、アメリカの大学生には現在のイスラエルの建国が、ヒットラ−のユダヤ人に対する暴虐を止め得なかった欧米諸国の罪障感からの、大戦後に無理やりにパレスチナ地区に押し込んだものであるということを知らぬ者が多いと聞く。こうした若い連中にとってこの映画は如何なる意味を持つだろうか?チャップリンの誠実なヒュ−マニズムを否定するものではないが、いささかこの映画が古びてしまっているように、今この2012年の時点では思ってしまう。同じ年代の製作でありながら今なお古びない「深夜の告白」や「コンドル」という作品の凄さを思う。呑気呆亭