11月3日(土)「次郎長三国志・殴り込み甲州路」

次郎長三国志・殴り込み甲州路」('53・東宝)監督:マキノ雅弘 原作:村上元三 脚本:松浦健郎 撮影:飯村正 出演:小堀明男/森繁久彌/河津清三郎/若山セツ子/久慈あさみ/小堀誠/広沢虎造
甲州にある大熊の賭場が猿屋の勘助に荒らされ、物見役を買って出て甲州へ潜入した投げ節お仲は、正体がばれて捕えられる。それを知った次郎長一家は甲州へ殴り込み、勘助を切ってお仲を救い出す。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎九番目は追分の三五郎。登場は前作の「勢揃い清水港」、三五郎が加わって次郎長一家が「勢揃い」したという訳だ。
相撲の興行を廻って次郎長に迷惑をかけた三五郎を前にして、次“今云ったことに間違いはねえんだろうな、三五郎さん”三“へえ、そういうわけで、あっしあ黒駒一家に仇の敵のと云われる思いはねえんでござんす。惚れて追いかけたのは向うの勝手、その女を殺したのは兄貴の大岩で、そうだろう、石”石“そそ、そうで”三“へえ、追分の三五郎、女に惚れられたことはあっても、女に惚れたこたぁ(とお仲を見やって)、へっ、そのオレがねえオヤブン、このお仲さんにぁ”お仲“ふふっ、馬鹿だねえ”三“おっと、そうだった、石のやつも惚れてるんで”と石松を見やる。石松“あっ…ほ、惚れてる”次“三五郎さん、それじゃあオメエ、未練で死ねねえってわけだね”三“おっと、オヤブン、惚れたのはこっちの勝手、なあに、二人ともあっさり振られたんでさ。なぁ、石(頷く石松)、へい、これで申し開きが出来やした。思い残すことはござんせん。オヤブン、あっしをこのまま黒駒一家に引き渡すなり、首切って届けるなり、ご存分にお願い申します”三五郎の背中を叩いて、石松“え、えれえ!”お仲“オヤブン、お仲は果報者でござんす、こんな”好いヒトたちに惚れられて、ねぇ、オヤブン”次“ウン…”お蝶“お前さん”次“ウン(とお蝶を見やって)、ウン、おう三五郎さん”三“へい”次“金は帰って来たし、オメエさんも帰って来てくれた。ねえ、この次郎長は、子分の少ねえ駈け出しのオヤブンだが、りくつに分の有る売られたケンカは、オウ、買うオトコだぜ”お仲“親分”鬼吉“やるんきゃあ”次“ははははは、そうだよなあ(と、大政に)”大政“オウ、生まれた時は別々だが、死ぬ時は一緒と、三五郎、石松、どうだい、誓おうじゃあねえか”三“石い”石松“三五郎う”お仲“良かったねぇ”三“ありがとうござんす”一同揃って“ありがとうござんす”大政“ははははは”次“ははは…”
こうして勢揃いした次郎長一家は、多勢を揃えて殴り込んできた大岩たちを見渡して、次“大勢でよく来てくれたな、わざわざ清水港まで来てもらった礼にぁ、オウ、みんな、コイツラ、一人残らずけえすんじゃねえぞ、叩っ斬れ!”と迎え撃つ。大岩たちの殴り込みの急を告げた豚松が、いつの間にかケンカの輪の中に…。
この第五作で勢揃いした次郎長一家は、猿屋の勘介に捕われたお仲を救うべく甲州へ向かう。前回記したように、豚松は急遽「コロサレル」ことになる。呑気呆亭