9月26日(水)「汚れた顔の天使」

汚れた顔の天使」('38・米)監督:マイケル・カーチス 音楽:マックス・スタイナー 出演:ジェームズ・ギャグニー/パット・オブライエン/ハンフリー・ボガード
★男同士の熱い友情に、サスペンスや見応えあるアクション・シーンを明快に絡めた、これが戦前の作品とは全く思えないほどのキレ味を見せる、誠に素晴らしい異色のギャング映画の傑作。小粋なギャング・スターとしてその名を馳せたJ・キャグニーが、その独特の存在感と演技力で多大な評価を受けた。幼い頃から仲の良かったロッキー(キャグニー)とジェリー(オブライエン)。しかしロッキーは二人でやった盗みの罪を一人で被った事をきっかけに転落の一途をたどり、今やいっぱしのギャングになっていた。一方のジェリーは生まれ育った町で牧師として不良少年たちの更生に力を注いでいた。15年ぶりに町に戻ったロッキーはジェリーが面倒を見る不良少年たちの憧れの的になるが、かっての悪事を庇ってやった悪徳弁護士(ボギー)が自分を殺そうとしている事を知って逆に殺してしまう。警察との銃撃戦の末に逮捕され、死刑宣告を受けたロッキーだったが嘲笑うかのように平然としている彼の姿に少年たちは一層感化されてしまう。彼等の未来を案じたジェリーはロッキーの元へ行き、ギャングらしく死のうとするロッキーとは全く逆な行動を取るよう最後の頼みをするのだったが……。<allcinema>

◎誰もが言うようにこの映画のキャグニーは実に素晴らしい。彼が主演でなかったらこの作品はまったく違った平凡なギャング映画になっていただろう。その身のこなし、愛嬌のある表情、メリハリの利いた口跡、それに比べるとややオブライエンが見劣りするのは、キャグニーが凄すぎるからだろう。ラスト、常に皮肉な笑みを口元に漂わせるキャグニーがその表情をどう変化させるのか、その難しいシ−ンを処刑場の壁に写る影で表現したマイケル・カーチスはさすがである。呑気呆亭