9月25日(火)「モダン・タイムス」

「モダン・タイムス」('38・米)監督・脚本・主演:チャールズ・チャップリン 出演:ポーレット・ゴダード/チェスター・コンクリン
★お金と機械にがんじがらめの“今の時代”を諷刺したチャップリンの長編喜劇。大工場の工員チャーリーはベルトコンベアで運ばれてくる部品のネジをしめ続けるうちに手の動きが止まらなくなり、狂人と思われ病院に送られる。退院するとクビになり、街をうろつくうちに、工員のデモ隊のリーダーと間違えられて監獄行き。放免されて造船所で働くが、未完成の船を進水させてしまい、波止場で食べ物を盗む娘(ポーレット)とともに逃亡する。川辺にボロ小屋を見つけて住みながら、ふたりは職さがしに出かける……。トーキー嫌いのチャップリンが、無国籍語で「ティティナ」を歌い踊り、初めて声を聞かせたことでも有名。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎プロローグの工員たちの出勤の場面はフリッツ・ラングの「メトロポリス」からパクッたようだが、工場の巨大なセットは素晴らしく、工場と監獄で展開されるギャグの数々は、チャップリンという人の底知れぬ天才を感じさせる。それはそれとして大いに楽しめるのだが、この映画のもう一つの見どころは、船荷のバナナを人目を盗みながらナイフを使って切り取り、弟や妹に投げ与える野性的でギラギラと精気に溢れる娘として我々の前に出現するポーレット・ゴダードである。彼女は途中カフェの踊り子として雇われていた時を除いては常に裸足で街を駆けめぐる。その姿はまるで野生の狼少女のようで、野性であるだけに文明に穢されてはおらず、それゆえにチャーリーと一緒にボロ小屋で暮らしていても、男と女のみだらな雰囲気を少しも感じさせない清潔感があって好ましく、チャップリンの他の作品に登場する優しく美しいだけの少女たちと異なって、自立する逞しさを備えているのである。大恐慌の時代という設定だけに、裸足で駆け回る娘という役回りが、あぁアメリカにもこういう貧しさが有ったのだなと納得されて、不自然さを感じることがなかった。呑気呆亭