9月11日(火)「大いなる幻影」

大いなる幻影」('37・仏)監督:ジャン・ルノワール 出演:ジャン・ギャバン/ピエール・フレネー/エリッヒ・フォン・シュトロハイム
第一次世界大戦下、フランス軍のマレシャル中尉とボアルデュ大尉はドイツ軍の捕虜となる。そして捕虜収容所からの脱走……。出身階級や身分や貧富などの差が何の意味もなくなる戦争。その残酷な戦争における人間同士の絆をヒューマニズム豊かに描いた名作。(ぴあ・CINEMA CLUB)

偵察機を撃墜されて捕虜となったマレシャル中尉(ギャバン)とボアルデュ大尉(フレネー)を、撃墜した独軍のラウエンシュタイン大尉(シュトロハイム)が食事に招く。戦場では力を尽くして戦うが、一旦戦場を離れれば武人と武人として応対するという騎士道精神の現れである。ボアルデュ大尉とのラウエンシュタイン大尉は共に貴族階級の出身であることから奇妙な心の絆が生ずる。この絆がラストに生かされる。この映画の面白さは落日を迎えつつある貴族階級の二人の決して表には出せぬ友情にある。その後に語られるマレシャル中尉とユダヤ人のローゼンタールの逃避行は付けたりのように思えてしまう。面白いのは彼等が最初に収容されるのが「第17捕虜収容所」であることと、トンネルを掘る前に窓をシーツで被うシーンと、掘った土を散歩時に捨てるシーンで、これはビリー・ワイルダーが見事にパクッたなと思って愉快だった。呑気呆亭