9月8日(土)「めし」

「めし」('51・東宝)監督:成瀬巳喜男 原作:林芙美子 脚本:井出俊郎 出演:原節子/上原謙/島崎雪子/杉葉子/風見章子/杉村春子/山村聰
成瀬巳喜男の初期の代表作。第二次大戦直後の東宝争議などで、一部の作品を除いては長らくその資質を発揮できないでいた成瀬は、念願の林芙美子の小説の映画化であるこの作品で、みごとに再起し、以来日本映画史を飾る数々の傑作を発表している。同名原作は林の絶筆で、倦怠期にある夫婦が些細な出来事から次第に亀裂を深めていくさまを描いており、脚色にあたっては、家を出た妻が夫のもとに戻り、平凡だが心安まる生活に幸福を見出すという結末が補足されている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎一昨昨日小津安二郎の「宗方姉妹」('50)を見て、今日成瀬巳喜男の「めし」('51)を見る。小津は高峰秀子を使い、成瀬はお返しに原節子を使う。両方の作品に上原謙山村聰が共に出ているのが面白い。小津は高峰を使いこなせていなかったが、成瀬は原の演技力と魅力を鮮やかに引き出している。「宗方姉妹」のキザな上原謙は頂けないが、「めし」の上原はその茫洋とした資質を上手く生かされている。原節子はこの年、この作品に加えて黒澤明の「白痴」と小津安二郎の「麦秋」という傑作に立て続けに出演している。原節子31歳、まさに女盛りの季節であった。呑気呆亭