9月5日(水)「宗方姉妹」

「宗方姉妹」('50・松竹大船)監督・脚本:小津安二郎 原作:大仏次郎 脚本:野田高梧 出演:田中絹代/高峰秀子/上原謙/山村聰/笠智衆
朝日新聞に連載された大仏の原作小説を、小津安二郎が新東宝で撮り上げた文芸作品。原作物らしいドラマチックな展開が特徴。日本の古い習慣に準じて生きる姉と、自由に束縛されずに生きる妹を対照的に描きながら、日本の社会を浮き彫りにしている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

田中絹代は、'48年の「風の中の牝鶏」では夫の佐野周二に階段から突き落とされ、この映画ではこれまた夫の山村聰に平手打ちを五六発くわされる。小津安二郎にとっての田中絹代という女優はよっぽど苛めたくなる女なのだろうか。田中絹代の妹役で出た高峰秀子は、成瀬巳喜男の作品に出る時とは違って、どうも小津調にはしっくりせず浮いている。この姉妹とやけに暗いだけの山村聰と、何のために出たのか分らない笠智衆と、やたらいい男ぶっている上原謙がチグハグなからみを繰り広げるだけの、実に後味の悪い映画であった。原作が悪かったのかとも思う。呑気呆亭