9月6日(木)「羅生門」

羅生門」('50・大映京都)監督・脚本:黒澤明 原作:芥川龍之介 脚本:橋本忍 撮影:宮川一夫 音楽:早坂文雄 美術:松山崇 出演:三船敏郎/京マチ子/森雅之
★世界にクロサワの名を知らしめた歴史的傑作。原作は芥川龍之介の短編小説「藪の中」。平安時代、盗賊・多襄丸が旅の侍夫婦を襲い、妻を強姦し、侍を殺す。やがて盗賊は捕われ裁判となるが、多襄丸・女・巫女の口を借りた侍の霊―すべての陳述が食い違う。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎先ず冒頭のまるで縄文の三内丸山の巨大遺跡を思わせるような巨木(その傍らにうずくまる志村喬)を使って造り上げた羅生門の廃墟(セットとは呼びたくない)に驚かされる。そしてラベルのボレロというおよそこの平安という舞台にはそぐわぬながら極めて効果的な音楽。革新的でありまた魔術的なキャメラ。美術:松山崇42歳。音楽:早坂文雄36歳。キャメラ宮川一夫42歳。監督:黒澤明40歳。脚本:橋本忍32歳。三船敏郎30歳。京マチ子26歳。森雅之39歳。志村喬45歳。千秋実33歳。上田吉二郎46歳。製作の箕浦甚吾の年齢は不詳。敗戦後五年目の若き才能の蝟集。
ラベルが1928年に作曲したボレロを使ってモ−リス・ベジャ−ルが、映画「愛と哀しみのボレロ」でジョルジュ・ドンに異色のバレー・ボレロを振り付けたのが、この「羅生門」から31年後のことだった。呑気呆亭