8月30日(木)「望郷・ペペルモコ」

「望郷・ペペルモコ」('37・仏)監督:ジュリアン・デュヴィヴエ 出演:ジャン・ギャバン/ミレーユ・バラン/リーヌ・ノロ
★舞台は、フランスの植民地アルジェリアの首都アルジェのカスバ。パリから逃れてきた凶悪犯ペペ・ル・モコは、ギャビーという美しい女と知り合い熱烈な恋をする。だが、嫉妬に狂ったペペの情婦が警察に密告してしまう。ギャバンの名声を決定づけたデュヴィヴエの傑作。

◎ラストのペペが上げる“ギャビー!”の声が船の汽笛にかき消されるシーンの衝撃は誰でもが語るが、この映画の「音」へのこだわりは、サイレントからトーキーの時代を生きた映画人ならではだなと感じ入った。その一つは裏切り者のレジスをカスバに巣くう悪党たちがじわじわと追いつめるシーン。あれっ!再生装置がどうかしたかなと思わせる無音のシークエンスがレジスの恐怖を一層際立たせる。今一つは、かつては花形の歌手だった女が、若い頃に吹きこんだ自分の歌のレーコドに合わせて唄うシーンだ。女がもたれかかる壁には美しかった若い頃のポスターが貼られており、今は見る影もなくなった女が人生を果敢なみながら唄う。その唄を聞くぺぺの胸に望郷と人生への焦りが生まれる。呑気呆亭