8月29日(水)「海賊ブラッド」

「海賊ブラッド」('35・米)監督:マイケル・カ−チス 出演:エロ−ル・フリン/オリヴィア・デ・ハヴィランド/ベイジル・ラズボ−ン
★映画史上に残る名コンビであるフリンとデ・ハヴィランド、30年代を代表するヒール・アクターのラズボーン。この3人の顔合わせだけでワクワクする。フリンの最高傑作であり、海賊映画の白眉であると言っても過言ではない。allcinema

◎英国王ジェ−ムズに反抗した廉で奴隷の身分に落されたブラッド(フリン)、その彼を助けようとして10ポンドで購ったアラベラ(ハヴィランド)、そのアラベラを巡ってブラッドと決闘するフランス海賊の首領(ラズボ−ン)という、活劇物にはお定まりの恋と苦難と戦いの物語。無論ラストの海戦のシ−ンの面白さは云うをまたないが、何といってもこの映画の面白さを形成したのは、共に奴隷の身分を脱してブラッド船長を頭に戴きカリブ海最強の海賊となって行く、それぞれに個性的な連中の描き方である。操舵の技あるブラッドの片腕、初戦で砲手としての腕を証明してみせたオッサン、臆病者ながら印象的な活躍をする肉屋、その他錚々たる面構えの連中を率いて、ブラッドが最初に皆と契約を交わすシ−ンが面白い。獲物は公平に分配する、怪我と手柄に応じて論功行賞をする、女は人質にしない、操船中は酒は禁止、等々。それらに違反した者には、一瓶の水と一切れのパンと一発の銃弾を装填したピストルを持たして流刑とする、という罰則の規定まであって、これが、ブラッドという人物の真直ぐな性根を側面から表していて面白かった。デ・ハヴィランドの輝かしい美しさはもちろん云うまでもない事ではあるが。呑気呆亭