8月24日(金)「おぼろ駕篭」

「おぼろ駕篭」('51・松竹京都)監督:伊藤大輔 脚本:依田義賢 出演:坂東妻三郎/田中絹代/山田五十鈴/月形龍之介/佐田啓二
★お正月興行の作品として、当時の大スターを起用して製作された作品。深川の信濃屋伝右衛門の寮で、御殿女中が殺された。現場の状況から女中の幼なじみで、旗本の次男・小柳進之介(佐田)に嫌疑がかけられる。中略 たまたま進之介を助けた夢覚和尚(坂東)と本多内蔵介(月形)は真相の究明に乗り出す。伊藤大輔監督の語り口は導入部の移動撮影から観客をひきつけ、緩急自在。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎坂東妻三郎のキャラクタ−と酔っぱらいで男嫌いの芸者田中絹代のからみを軸にして物語は展開して行く。ラストに坂東の夢覚和尚が河内山宗俊を騙る大芝居があったりして、いわばバンツマの映画なのだが、夢覚和尚の友人・旗本本多内蔵介を演じる月形龍之介の、田沼をもじった老中沼田が支配する賄賂が当たり前の時代の風潮に背を向けて、無頼の徒とも交わる侍の佇まいがとてもいい。月形という役者はどちらかといえば悪役・敵役の多い人なのだが、この幕閣の脅しにもビクともせず、イザとなれば槍を執ってもとことん抵抗して見せるぞという肚の据わった旗本というキャラクタ−はまさに適役で、この役の月形龍之介を主演に据えた作品を観てみたいと思わせるほどの、いわば主役を食ってしまった儲け役でありました。呑気呆亭