8月23日「小原庄助さん」

小原庄助さん」('49・新東宝)製作・脚本:岸松雄 監督・脚本:清水宏 撮影:鈴木博 美術:下川原友雄 出演:大河内伝次郎/風見章子/飯田蝶子/坪井哲/田中春男/清川虹子
★富士山麓に住む“小原庄助さん”こと杉本佐平太は先祖伝来の家屋敷や田畑を村一番持っていたが、村人は次から次へと寄付金や頼みごとをし、佐平太は生来の人の良さから彼の財産を人々に分け与え、遂に財産を使い果たす。
有名な民謡にヒントを得たユ−モアあふれる傑作。剣戟スタ−、大河内伝次郎が好演。岸松雄の脚本も、清水宏の長所を生かすコツを心得ている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

清水宏という人は前年の「蜂の巣の子供たち」を見て子供を演出する名手だと思ったが、まさかロバまで自在に使いこなすとは思わなかった。太った佐平太を乗せて歩く痩せたロバが秀逸。まるで心有る(実際有るに違いないが)モノのように、このご主人の心を分っているのはこのボクですよとでもいうように目で演技するこのロバが、傷心の佐平太を残してひとり畦道を辿って屋敷に戻って行くシ−ンには涙さえ誘われる。そして家屋敷を処分した佐平太は、この愛するロバを村の子供たちに託して、一個のトランクと雨傘を携えただけの軽装で晴れ晴れと新しい土地を目指すのだが、その道に待っていたのは実家に帰ってしまったと思っていた糟糠の妻。“オイ、早くいかないと一番電車に間に合わないぞ…”と照れ臭げに妻に言う佐平太だった。呑気呆亭