8月2日(木)「蜂の巣の子供たち」

「蜂の巣の子供たち」('48・蜂の巣映画部)製作・監督・脚本:清水宏 撮影:古山三郎 音楽:伊藤宣二 出演:島村俊作/夏木雅子/久保田晋一郎/千葉義勝
★無類の子供好きの清水宏には子供がなかった。そんなこともあり、戦争孤児と呼ばれる浮浪児たちを引き取り自ら面倒を見た。かくて、“蜂の子”という映画プロダクションを作り、その浮浪児たちと素人俳優たちを出演させ、私財を投じて製作したのが本作品である。
復員した島村は帰るべき家も肉親もなく、下関駅前にただぼんやりと立っていた。ひょんなことから8人組の浮浪児たちと、引揚者の女性・夏木と知り合う。皆同じような立場にあったので、心に通い合うものがあった。一同は別々にあてのない放浪の旅を広島へ向けて開始する。素人俳優たちのリアルな演技、オ−ルロケによる撮影など、清水の狙いのみごとさを示す素晴らしい作品である。

◎戦地から引揚てきた復員兵・島村が佇む下関駅頭の、子供たちとの出会いのシ−ンが素晴らしい。浮浪児のリ−ダ−格の晋公の子供ながらに腰の据わった度胸と知恵者ぶりが頼もしく、群れは島村と晋公によって先導されて行く。かっぱらいやもらいで生きるのではなく働いて生きるのだと島村に教えられて、各地で賃仕事をしながら四国経由で、島村の出身施設のある広島を目指すのだが、途中、母を海で失ったよし坊の哀しいエピソ−ド(病気のよし坊に海を見せようとして背負って山を登る豊の息の詰まるような奮闘とよし坊の死)を挟みながら、子供たちの生き生きとした生態を清水宏は淡々とした筆致で描いて行く。半ズボンを穿いた子供たちは、あの頃の僕たちそのものだった。呑気呆亭