8月1日(水)「女優」

「女優」('47・東宝)監督:衣笠貞之助 脚本:久坂栄二郎 音楽:早坂文雄 出演:山田五十鈴/土方与志/赤木蘭子/進藤英太郎/志村喬
★新劇草創期の女優・松井須磨子と、文芸協会の主催者・島村抱月との恋愛事件を題材にした作品。愛し合いながらも、社会に強く批判され、はかなく死を迎える女・須磨子を山田五十鈴が熱演。同時期、溝口健二が「女優・須磨子の恋」を作ったが、世評は本編の方が高かった。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎若き日の山田五十鈴が、田舎娘・小林正子が女優・松井須磨子に変貌して行く様を熱演する。新劇草創期の熱気と事象が丁寧に描かれていて興味深かった。映画のラスト近く、島村抱月松井須磨子はその運命に影を落とすような舞台、有島武郎作「死と其の前後」を上演するのだが、このシュ−ルな舞台設定は当時実際に行われたモノを再現したものだったのだろうか、それとも戦前'26年に前衛映画「狂った一頁」を取った衣笠がその新感覚を生かした演出で創作したモノだったのだろうか。いずれにせよまるで現代の暗黒舞踏を思わせる舞台映像であった。
山田五十鈴は熱演だが、やはりこの人は心も体も和服の人であって、バレ−のレッスンのシ−ンなどには五十鈴フアンとしてはハラハラさせられてしまったのだった。呑気呆亭