7月20日(金)「伊賀の水月」

「伊賀の水月」('42・大映京都)監督:池田富保 脚本:比佐芳武 出演:坂東妻三郎/羅門光三郎/香川良介/原健作
★坂東妻三郎が荒木又衛門に扮し、伊賀・鍵屋の辻における義父のあだ討、三十六人斬りが描かれる大チャンバラ時代劇。鬼気迫る坂東の殺陣、効果的な構図でそれを捉えた名コンビ・池田富保の演出など、格調高い乱闘の美学を見せてくれる。戦後再公開の折り「剣雲三十六騎」と改題された。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎脚本が史実(義父ではなく甥のあだ討ち/又右衛門が切ったのは河合甚左衛門ただ一人)を捻じ曲げて書かれていることに違和感をまず覚え、ま、これは講談の映画化なのだからと納得しようとしても、渡辺数馬がまるで弟(これが河合又五郎に斬られたことから話が始まる)の源太夫めいた色若衆の前髪姿であることが気持ち悪くて、坂東妻三郎以下錚々たる出演者を揃えた作品ではあるが、まったく感情移入が出来ず楽しめなかった。
かつて、TV東京の時代劇シリ−ズで加藤剛主演の「荒木又衛門」という作品があったが、これは長谷川伸さんの原作に忠実に作られていて、TVとはいえ見応えのある佳作に仕上がっていた。呑気呆亭