7月19日(木)「續姿三四郎」

「續姿三四郎」('45・東宝)監督・脚本:黒澤明 音楽:鈴木静一 出演:藤田進/轟夕起子/大河内伝次郎/月形龍之介/河野秋武
★名作の誉れ高い「姿三四郎」の続編。前作のラストで旅に出た三四郎が修道館に帰還するところから物語は始まる。出演者も前作とほぼ同じで、三四郎に破れた源之介を演じた月形龍之介が彼の弟に扮して登場。藤田進と再び演じる決闘シ−ンがクライマックスとなる。柔術家がアメリカ人拳闘家に叩きのめされると、愛国心から拳闘家をやっつけたり、日本の少年をいじめるアメリカ水兵を投げ飛ばしたりと、戦時下の作品らしい場面も見られる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎前作にあったある種のあざとさが薄れて好感が持てる作品になっている。特に三四郎を演ずる藤田進の人の良さが生かされていて、小夜や矢野正五郎や和尚とのやり取りも成長を感じさせる描き方がされていて、クロサワその人の成熟さえ思わせる出来である。
車引きの少年をいたぶるアメリカ人の水兵に対しても“ここでは怪我をするよ”と言いながら海を背負った岸壁に誘って投げ飛ばすところなんかは、前作の矢野の闘い方を学んだやり方だとしても、三四郎の優しさと武道家としての成長を感じさせたのだった。
三四郎に破れて身体を壊した源之介を自ら車を曳いて送るシ−ンも嬉しいし、ラストの雪原での源之介の弟たちとの空手対柔道の決闘も、舞台設定にはクロサワのあざとさが出ているが、三四郎が倒した相手を介抱し粥を炊いて食わせて、その人柄と笑顔で敵意を氷塊させてしまう山小屋の一夜の描写は、前作を凌ぐモノがあった。呑気呆亭