7月14日(土)「自由を我等に」

「自由を我等に」('32・仏)監督・脚本:ルネ・クレ−ル 出演:アンリ・マルシャン/レイモン・コルディ
★クレ−ルがト−キ−初期に作った代表作。刑務所で囚人仲間だったふたりの男が、社会に出ても友情を保ちつつ自由気ままに生きる姿を、セミ・ミュ−ジカル形式で描く。純粋に映画的な発想、表現と、ボ−ドビル風音楽の使い方が絶妙で、ト−キ−としての実験的精神に満ちた一編。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎刑務所の場面はフリッツ・ラングの「メトロポリス」('26・独)を想起させる。仲間のエミ−ルを置き去りにして脱獄を成功させたルイは、要領よく出世して蓄音機製造会社の社長になるのだが、楽曲♪自由を我等に♪をモット−として口ずさむ彼にして、その蓄音機製造工場のシステムはまるで刑務所と変わりがないという皮肉が効いている。そのシステムを極限まで推し進めて、ルイは無人工場の建設を目論むのだが、刑務所から出所した仲間のエミ−ルが現れてその非人間的なシステムに人間味をベタベタ塗り附け始めてから破綻が生じる。
刑務所仲間の脅迫で窮地に陥ったルイは、新工場を労働者にプレゼントすると宣言して、ドタバタ騒ぎの果てに無一文の浮浪者となってエミ−ルと共に、遂に獲得した「自由」を満喫する放浪の旅に出る。その映像にモンタ−ジュして、ゴミを蓄音機に再生する無人工場のシ−ンと、為すこともなく所在なげに釣竿を振る労働者の一群を見せることをクレ−ルは忘れない。自由とは何か?労働とは何か?呑気呆亭